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節句人形の有職造花
現代では、主に雛人形に飾る桜橘が代表的なものです。昭和初期頃までは、節句人形に付随する様々な人形に持たせる小道具としてや、脇などに添える立木などとしても、数多く制作されていました。

『十一・十二世面庄頭丸平七世大木平蔵作二番親王尺三寸十九人揃』(間口4.5m×奥行3.6m)
『二世川瀬猪山練頭七世大木平蔵作六番親王七寸二十一人揃 (間口2.3m,奥行2.1m)』
脱ぎ着せ仕立て(着脱自在)によるこの雛は、重陽の頃に納品されたため櫛や元結いの文様が菊とされていたり、仕丁の小道具にも紅葉の掃き寄せを添えたりと、秋の仕様にされています。随臣の間に小菊の籬を置いたのもその為で、花の色は陰陽道に則り、葉の緑から黄・赤・白・紫としてあります。
桜立木
二番親王尺三寸二十一人揃に据える桜橘です。私は満開の桜よりも二分三分、これから咲くという時期により美しさを感じるのですが、雛飾りのことでそうもいかず、ともかく花数の三倍以上3500本もの蕾にしたのですが、造花故かそれでも満開に見えます。山桜ですので、葉も1500枚以上あります。雛のための桜橘としては異質でしょうが、自然木を活かした木組み故のことですので、仕方ありません。今回は絹サテンでなく、極く細かい縮緬に似たフラットという絹を使いました。画像は垣根に入れる前の状態です。
桜橘図(高さ約65cm)
桜は花930、蕾1400、葉1200枚ほどで、絹サテンを使いました。蕊には日本画岩絵の具によって花粉が施されています。梅の古木を木組みに使い、苔もそのまま生かしてあります。
橘は、実が48個、葉が1300枚程です。もちろん小さな花や蕾もついています。木組みは犬柘植の古木により、出来る限り原木の形そのものの味わいを生かして制作しました。
御引直衣立像と盛花
昭和初期頃、丸平大木人形店で作られた珍しい装束による立像に組ませた桜橘は、籐で作った球体に造花を植え付け三宝に乗せた様式です。雛人形での桜橘は、本来御所紫宸殿前の左近の桜、右近の橘を象徴するものですが、それを供え物の一つとして装飾的な扱いとした様式です。
『稚児牡丹手持ち花図』(十二世面庄頭丸平七世大木平蔵作尺居稚児
手持ち牡丹
この居稚児は、丸平さんに残されていた名人頭師十二世面庄のおぼこ七寸という大きさの雛頭を使って制作されたものです。本来は扇を持ちますが、華やかにするため紅白の牡丹を作って持たせてあります。素材は絹サテン。蕊にも岩絵の具による花粉を施してあります。
官女と桜立木図(丸平五世大木平蔵作)
丸平大木人形店に残る写真帖からのもので、有職造花は昭和初期雲上流の制作。花数などいくらもないのに極めて端正な配置で無駄がありません。注目するのは下草で、レンゲの花が見えることです。当時はこうした桜まで、花びらを一枚一枚型抜きして鏝当てしています。
御殿飾り曲水の宴
昭和初期丸平五世大木平蔵時代に作られた御殿飾りで、手前には庭園を飾る様々な木々が有職造花によって植えられています。御殿の規模や完成度も凄まじい水準ですが、こうした依頼が来る時代というのは有職造花師にとっても制作者冥利に尽きる時代といえたのかもしれません。
木彫り彩色花見人形
丸平五世大木平蔵時代に、岩崎小彌太の依頼によって制作された組み物ですが、姫君が多くの腰元と共に花見に繰り出した場面です。中央に桜の立木が据えられますが、この人形は晩餐会を彩るためテーブルの中央に並べられるものでしたから、向かい合う方との視野や会話の妨げにならないよう、立木は背を低く作ってあるのです。最小限のパーツで感嘆に値する完成度が見られます。
子ども大名行列
五月人形として、昭和初期丸平が制作したものですが、雲上流による有職造花造花は松とツツジかと思われます。有職造花に使われる原木は、とにかく形のよいものを用意出来なくてはなりません。この松なども、太い幹の一部分が使われているのですが、実に生かし方が上手です。
檜兜(ヒノキカブト)
皇室では男子が誕生すると、今でもこの檜兜を誂えるしきたりがありますが、檜兜のてっぺんに飾られるのがダシと呼ばれる有職造花です。今では牡丹や菖蒲に蓬と皐、梅などしか見られませんが、江戸の頃には上級の公家に男子が誕生するとその後何年も檜兜の新調やダシの献上が続いたらしく、ダシの種類も“唐子遊び”“桜に琴”“松にインコ”“梅に兜”“菊に鶴”“雲に麒麟”などと実に様々な物の記載が孝明天皇六歳の時の献上物記録に見られます。そうした組み合わせがどこに由来するのか分かりませんが、いつか全て復元してみたいと考えています。

『檜兜 牡丹』(林直輝氏蔵)

牡丹

檜兜用に初めて作った有職造花ですが、何せ檜兜が手元にありませんので、実際にダシを刺してサイズや構成の検討が出来ませんでしたので、うまくいっていません。要望もあって、牡丹は雲上流の伝統的な形を敢えて踏まず、オリジナルでしてあります。葉は端布を利用していて、全て手で刻んでしましたので葉数は320枚ほどあります。
『檜兜 紅梅白梅』(林直輝氏蔵)

紅梅白梅

檜兜用のダシです。孝明天皇の節句に贈られたというダシに“梅に兜”という記載が見られますが、こうした梅の枝に兜を乗せた形でなしに、兜を主体にして梅一枝を添えた形体かもしれません。ただ、兜の上にまた兜というも妙なことです。これは決まりものでない梅のダシを…という依頼で構成したもので、梅の古木を使いその枝振りに逆らわず花を咲かせてあります。

『檜兜 菖蒲』(林直輝氏蔵)

蓬に菖蒲

言うまでもなく端午の飾りです。最初は、緑と紫だけだと色彩に乏しい気がして、場合によっては何輪か皐を…と考えていたものの思いの外スッキリとまとまり、この方が端午には相応しいかとそのままにしました。私の場合、完成のプランなど漠然としているのが常で、構成するうちに閃いて形が出来ます。ですから、同じものを…と言われると困ってしまいます。  

『檜兜 菊に鶴』(林直輝氏蔵)

菊に鶴
孝明天皇に献上されたダシの記録にある「菊と鶴」を私なりに作りました。人形研究家である林直輝さんから古い毛植えの鶴が送られてきた時、渡りに船と咄嗟に思いついたのが「菊に鶴」の再現でした。支柱の先端に薄い板を土台に三羽の鶴を組み合わせ、周囲は小菊のみにして色も陰陽道に則り緑黄赤白紫としたせいか、鶴の古さも気になりません。
『檜兜 紅葉賀』(林直輝氏蔵)

紅葉のダシ
様々なダシの連作ですが、紅葉の立木を基本にして雅楽の舞に使われる鳥兜を載せ、源氏物語「紅葉賀」に見立てました。この組み合わせは江戸時代の記録に残り、その再現で作ってみたのです。

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