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薬玉・平薬
薬玉には、真行草三種類があります。共に、本来は邪気払いを意図して各々に香を入れた一つ及び三つの玉を必ず備えて、その周囲に様々な有職造花を配し、飾り結びした六色の飾り紐(絹紐)を長く垂らすのを特徴とします。

真の薬玉は、端午の節会に参内した際に下賜されたもので、紅白の皐・蓬・菖蒲を有職造花で作ります。
真の薬玉
先に掲げた薬玉とは異なるもう一つで、同じく丸平大木人形店所蔵のものです。珍しいのは通常蓬と菖蒲を下げるところに菊の一枝が加えられていることです。思うに、九月九日の重陽節には茱萸嚢と掛け替えられる真の薬玉ですので、それを暗示する意図ではなかったでしょうか。
行の薬玉
江馬務の著作「薬玉考」に、『行の薬玉は六角の板に表を赤、裏を萌黄の布貼りして有職造花を植え付けたもの』とあるのを読んだとき、御所に伝わったらしい有職造花図案に有った、六角の妙な図案こそが「行の薬玉」であったことを初めて知ったのです。この復元は幅33cm厚さ0.7cm程の桐板を使用。拙く散漫に描かれた図案をよくよく見れば、左右に独自の流れが見えるので、出来るだけそれに忠実に植え付けてみたのです。桜・牡丹・菖蒲・卯の花・菊・紅葉・水仙の七種は、四季の網羅でしょうか。

行の薬玉図案 行の薬玉 復原(幅33cm)
平薬(ヒラクス)
平薬は、直径一尺ほどの籐の輪に薬玉と有職造花で構成します。
邪気払いとはいえ、室内装飾の役目が高かった平薬でしょうから、月毎の交換により色褪せなどによる見映えの損傷に配慮したのでしょう、藤原定家が季節の花と鳥を取り入れて詠んだ旧暦十二ヶ月の和歌(拾遺愚草)を題材とした図案も残されています。
下に掲げたものは新暦十二ヶ月の花で作ったものですが、薬玉を省いて“花の丸”としてあります。

十二ヶ月の平薬図案と復元
藤原定家が十二ヶ月の花鳥を詠んだ和歌を題材として、屏風絵や陶芸の図案としたものは、御所の調度を始め琳派の作品などにも多いのですが、この図案はどうやら本来御所に伝わる粉本の写しのようです。非常に達者に描かれた「藤」の図案を御所の粉本として古本カタログに見つけた時は驚きました。この図そのものは稚拙ながら、少なくとも配置だけはそのままに写されているのか、中々良い図案だと思います。
一月 松竹梅 『松竹梅平薬図』(直径30cm)
定家十二ヶ月の平薬図案の内、一月のものです。藤原定家の一月の歌は柳なのですが、図案には「柳ではあるけれど花負けしてしまうので…」と書かれています。本来邪気払いを目的とした平薬とはいえ、この辺りが装飾を意図した有職造花の飾り物であった証明でしょうか。三色の梅が構成されている松竹梅ながら決して通俗に流れず、中々上手にまとめられた図案だと思います。
二月 桜 『桜の平薬図』(直径30cm)
定家十二ヶ月の平薬図案の内、二月のものです。良くできた図案ですが、図面通りだと花が大きすぎてしまいますので、描かれた花や葉の付かせ方を基に、図案の趣を写すことにしました。花70、蕾25、葉104枚の構成です。こうした有職造花でも自然木を使いますので、全く同じ物を作ることが基本的には出来ないのです。
三月 藤 『藤の平薬図』(直径30cm)
定家十二ヶ月の平薬図案の内、三月のものです。爽やかな緑と対比させるために藤は青系の紫に染めました。絵空事の図案でもありますから、構成された枝のどこが一番高く…などといった立体の説明が無いので、藤蔓の様な図案だととりわけ厄介です。本来不安定に垂れ下がるものであってもそれでは落ち着きませんので、所々の葉を輪等に固定させてあります。
四月 卯の花 『卯の花の平薬図』(直径30cm)
定家十二ヶ月の平薬図案の内、四月のものです。図案は空木(ウツギ)にも見えますが、『…垣根もたわに咲ける卯の花』と詠まれているのですから、初夏の山に咲く卯の花にして図案通りの配置にしてみたのです。この図案は、御所に残っていたといわれる粉本に比べて覚え書き程度のものでもあり、原図でどの程度に描かれていたものだったのかは残念ながら分かりません。
五月 菖蒲 『菖蒲の平薬図』(直径30cm)
定家十二ヶ月の平薬図案の内、五月のものです。定家が五月の歌に詠んでいるのは橘なのですが、一月同様に“花負け”してしまうためだったのか、端午の節会の代名詞ですらある花のためなのか、代わりに菖蒲とした理由は図案の中に一言も見られません。また、本来季節の先取りとしての花選びでありながら、菖蒲はそれにも合致しない唯一の例外となっています。
六月 常夏 『常夏の平薬図』(直径30cm)
定家十二ヶ月の平薬図案の内、六月のものです。常夏とは撫子のことですが、初夏から秋に入るまで夏の間中咲き続けるため“常夏”と呼ばれるとのことです。花びらのギザギザは細かすぎて型に起こすことも出来ず、一枚ずつハサミで切り刻むのです。撫子のみでまとめるのは中々難しいのですが、とても良くできた図案だと思います。
七月 女郎花 『女郎花の平薬図』(直径30cm)
八月 萩 『萩の平薬図』(直径30cm)
定家十二ヶ月の平薬図案の内、八月のものです。萩の花自体は藤と同じ造りなのですが、何しろ細かく数も多いので難儀ではあります。三色の萩を取り入れてまとめてありますが、虫の音が聞こえてきそうな図案になっていて制作意欲を掻き立てられるのです。まだ暑い時期に懸けられる平薬ですが、秋風を呼ぶような趣を感じて頂ければ成功というものでしょう。
九月 薄 『薄の平薬図』(直径30cm)
定家十二ヶ月の平薬図案の内、九月のものです。定家の九月の歌は薄だけで桔梗は詠まれていません。ここにも“花負け”しない配慮が見えるわけですが、桔梗が加わっても地味な地味な図案です。様々秋草はあろうけれど、薄が主役である以上桔梗程度に留めざるを得なかったのではないかと考えています。
十月 菊 『菊の平薬図』(直径30cm)
定家十二ヶ月の平薬図案の内、十月のものです。何種類もの菊を豪華に丸の中に散らせた図案ですが、絵空事と申しましょうか、輪の寸法からすると、一つ一つの菊が大きすぎてしまうのです。そのため実際には適度に大きさを加減する必要がありました。一輪の菊を作るのに鏝入れだけで最低32回必要ですから、とても手間のかかる制作の一つなのです。
十一月 枇杷 『枇杷の平薬図』(直径30cm)
定家十二ヶ月の平薬図案の内、十一月のものです。花自体は地味なものですが、深い緑の葉色に引き立てられるようなほんのり薄黄色の花は、濃金茶色の萼にアクセントされて金色にも見える中々美しいものです。この季節、他に花らしい花もなく枇杷にならざるを得なかったのでしょうけれど、平薬への起用は当然のことと思われるのです。
十二月 早梅に水仙 『早梅に水仙の平薬図』(直径30cm)
定家十二ヶ月の平薬図案の内、十二月のものです。まだ咲き始めたばかりに頼りない梅二種の様と、今を盛りに香り高く咲く水仙を組み合わせた図案です。水仙の葉は裏打ちしたものを二枚重ねて厚みを出します。ほんの薄っすらと黄にそめた絹サテンで作る水仙の花びらから、近づく春の温みは伝わるでしょうか。スッキリとまとまった図案だと思います。
季節の平薬
白梅に鶯−春の平薬−
平薬の場合、左右の重さを揃えないと輪が傾いてしまうため、片側にモチーフを寄せた洒落た構図ほど、重心が偏ってしまっていけません。自然木を使う時ほどそれは顕著で、そうした制約を感じさせずに月並みに陥らない構図を目指さなくてはなりませんからなかなか厄介なのですが、だからこそ面白いということにもなるでしょう。鶯は木彫り彩色。二色の梅が満開に咲く中、一羽の鶯が花をついばむ様ですが、梅は自然に咲くままを造花に写しても様にならないもので、自然と作り事の融合が必要です。
日陰の雪−冬の平薬−
三色の椿が咲いた上に、遅い雪が降り積もったものの、現れた陽射しに日陰になった部分だけ雪が残った光景です。雪は膠液を塗った上から、荒い岩胡粉を何度も振りかけ固まらせて作りますが、向かって右斜めから見ると雪の白が際だち、色の対比が映えます。このような一重の椿は、花芯をずんぐり作って埋もれさせるのがコツでしょうか。厳密に言えば、こうした季節は早春というべきなのでしょうけれど、冬の花材に困っての苦肉の策です。下げ花は、雪を被った水仙と竹にしました。

紫陽花−夏の平薬−
そもそも有職造花の範疇に紫陽花が入るのかも分かりませんが、梅雨空にひっそりと咲く白い紫陽花を見ていたら、矢も楯もたまらず作ってみたのです。季節に後押しされ、今なら作れるような気になったのです。
1.5p四方の絹を4枚の萼に切り出して薄青と薄紫だけに染め、スッキリとした仕上がりを試みましたが、ふと思いついて背後に絹スガ糸を縦に幾筋か張ってみると、梅雨空からこぼれ落ちた雨になりました。
萼にはあまり光沢のない絹を使い、反対に葉は絹サテンを使って濡れた風情にしました。
白芙蓉−初秋の平薬−
江戸琳派の第一人者、酒井抱一の秋草図をヒントに作りました。抱一の花鳥画は、有職造花を作る上で参考になるところが頗る多く、さりげなく描き添えられた虫や小鳥も、有職造花の小道具として相応しい物ばかりなのです。白芙蓉を中心とした抱一の秋草図は二種類ありますが、軸物の事でどちらも縦長の画面構成ですから、輪の平薬だと写しに無理があり花の配置は図の通りではありません。白芙蓉は非常に清楚な花ですが割合作り易く、絹自体の美しさも引き出してくれるように思います。

曼珠沙華−初秋の平薬−
以前から一度作ってみたかった花ですが、面倒なようでいて何しろ葉っぱの一枚も無く、僅かに3.5p×0.3pの花びらの鏝当ても単純です。小さな花の一つに計7本の蕊がありますが、針金に絹刺繍糸を巻き付け、花粉として黒岩絵の具と金を彩色してあります。白の曼珠沙華は珍しいのですが、白のみでは葬式の花のように見えながら、紅白取り混ぜると一気に華やかなものになります。有職造花でこの花が作られた事は無いのではないかと思うのですが、十分有職造花として成り立っているように思います。
初秋の野−秋の平薬−
ススキに女郎花、小菊だけで構成した初秋の野をイメージした平薬です。問題なのは女郎花で、これが有職造花で作られたことがかつてあったのか甚だ疑問があり、この材料も制作法も有職造花としては反則なのではないかと思いながら、他に方法を思いつきません。彩色に日本画岩絵の具を使うためその重量から、極く小分けにして繰らないと時間を経るに従い垂れ下がってしまうのです。この平薬はずっと以前に制作したものですが、修理に帰ったのを機に、平菊を二輪だけ加えてまとめ直したものです。
抱一偲草−夏の平薬−
酒井抱一の「夏秋草図屏風」を見ていて思いついた有職造花です。夕立に打たれた直後の薄・朝顔・女郎花・白百合ですから、花々は頭を垂れて咲くのです。原画の趣を直径一尺の籐の輪に再構成した、言わば意臨でしか成り立ちませんので、薄や女郎花の位置など絵の通りではありませんが、琳派の雰囲気を出すため、薄の葉脈を純金泥で彩色してみました。白百合の雄シベは絹刺繍糸を巻き付けて効果有り、有職造花は絹で無ければ…と改めて思わされた制作でもありました。
錦秋−秋の平薬−
流水桜橘の平薬と対になるよう、龍田川と題して紅葉が川を流れる光景の平薬を造ろうとしたのですが、赤・黄・紫を極薄に染めた小菊で周囲をびっしりと埋めたら何とも華やかになってしまい、ならばと下げ花も三色の玉菊で豪華にまとめ、題名も「錦秋」としました。紅葉はどうしても下が透けてしまいますので、籐の輪に薄茶に染めた絹を張り、その上から植え付けてあります。紅葉には、ピンセットで一枚ずつ持ち上げては角度を微妙に変えたりして、静かな躍動感を与えてあるのです。
十二月(枇杷とツワブキ) 四季の平薬



桜橘の平薬

雛の節句に飾る平薬として、桜と橘を流水形に散らしてとの依頼で制作しました。春夏の花での薬玉を作った折り、フラットという細かい縮緬のような絹生地を使った桜がとても美しく、これもそれで作ってみたのです。既に黄ばんでいた生地を活かしながら、敢えて淡い色彩に染め、鏝当ても変えてふくよかに仕上げました。下花は、桃花と柳です。
『四季の平薬図』(直径33cm)
四季の平薬
四季を通じて飾れる平薬として、輪の中に四季の花全て(春−藤・山吹・桜・菖蒲・牡丹・ツツジ,夏−撫子,秋−薄・紅葉,冬−紅梅白梅)を構成してみました。そのため、通年の室内装飾としてお使い頂けます。
下花は紅白の椿。中央にある大きな赤い玉が薬玉で、中に入れた香によって邪気を祓うというのが本来の目的です。尚、有職造花の技術のほとんどが、これ一つに見られるものにもなっています。

四季風鈴掛
江戸期の巻物に、様々な有職造花の図案とその値段を記したものがあり、そこにも四季の花を平薬仕立てし、赤い房と風鈴二つを下げた図案がありました。その典雅な図に殊更惹かれてしまい、きっちり復元してみようと銅の金具を特注して臨んだのです。平薬仕立てとはいえ宙吊りにされますので、造花も多少立体的に構成してあります。巻物に記された値段は何と壱両二歩。輪の下に留まる小鳥は私の木彫りですが、飾り物のことですから何の鳥というのでなく、様式的な装飾の小道具として彩色してあります。
『山桜の平薬図』(直径30cm) 『朝顔の平薬図』(直径30cm)

山桜の平薬図
必ずしも花を主役としない山桜は実に美しいものです。山桜の種類にもよりますが、葉色の染めが難しく、これは濃い肌色に染めた地色に赤紫の染料を後刺ししてあります。ゴテゴテさせずに、花が43個、蕾25個、葉232枚と最小限のパーツで構成しました。蕾は羽二重を二p角に切り、何度か三角に畳んでは萼に差し込んで作るのです。

朝顔の平薬
朝顔が有職造花の範疇かどうか不明ながら、いずれにしろアートフラワーと一線を画したものでなくてはならないでしょう。朝顔の制作にはとりわけ作為を用いず、予め花が付いた状態の蔓を作ってしまい、それを輪の中に這わせて偶然性に委ねます。この方法はもう7年も前になる前回の朝顔制作と同じで、それがベストのようです。出来るだけ清楚にとの要望から籐に巻きものもせず、紐も五色紐でなしに白一本を使って涼しげにまとめてみましたが、とても上手くいったように思います。
秋の平薬
七夕花扇のパーツの残りで作ったのですが、飾り紐を付けたらまた随分と印象が変わるでしょう。それだけで秋の平薬が何通りも出来る菊は、豊富な色や種類の違いだけでなしに、籬(マガキ)、重陽の菊の被せ綿、残菊等々、かさねの色目にも六種類とか見られるように、有職造花でも制作意欲をかき立てられる花と申せましょう。
『松に御簾の平薬図 1』(直径33cm) 『松に御簾 2』(直径33cm)

松に御簾の平薬 1

依頼で二度目となった松のみの平薬制作でしたが、檜の板を渡して柱と軒下を象徴し、柱には金具も付けてみたのです。この柱の下方に季節の花を付ければ、その時々の飾り物にもなるように思います。画像だとゴテゴテして感じますが、立体だと案外スッキリ出来ています。

松に御簾の平薬 2
京都の藤原さんという帯屋さんから、美しい絹糸(帯の経糸)の提供を受けましたので、有職造花ではそれがこんな風に松に変わりますというサンプルのように作ったものです。最初は松だけでなく秋草をあしらって晩秋の平薬にしようかと考えていたものの、この糸での松があまりにも美しいので、御簾をあしらって庭の松を演出してみたのです。


『紅葉の平薬図』(直径30cm) 『柳と垂れ桜の平薬図』(直径30cm)

紅葉の平薬
小さな型で抜いた紅葉のみを使って、ゴテゴテ重くならないように仕上げました。紅葉を詠った和歌の短冊でも下げてみようかとも思いましたが、そのままで完成としたのです。こうした紅葉の平薬は、既に充分色づいたものでなしに、緑葉から徐々に紅葉していく様を作っても情緒溢れるものが出来るでしょう。紅葉の制作は、染めの工夫に一段と楽しみがあります。

柳と垂れ桜の平薬
何しろ葉の一枚が長さ2p幅0.3p程に過ぎない柳は、ほとんど他で使った緑の端布をハサミで切り出して使っています。一枚ごとに一筋鏝を当ててから刺繍糸で針金に括っていき、それをまとめて柳の一枝として行きます。垂らした桜の間からも柳を引き出し、“見渡せば 桜、柳をこき混ぜて…”としてみようとしたのですが、少々うるさくなったようです。


『松と椿の平薬図』(直径30cm) 『七夕の平薬図』(直径30cm)

松と椿の平薬
京舞井上流の扇には、紅白の椿と薄紅ぼかしの椿、そして松葉が描かれていますが、名取り披露ではそれらを染め抜いた留袖を着て舞うのが決まりとのこと。この平薬はそれにあやかった仕様で、下がった松の間から三種の椿が顔を覗かせているという設定です。今回は、様式的でありながらよりリアルな椿を目指した鏝当てにしたのですが、この方が、花びらの美しさが引き出せたように思います。非常に満足した出来で、気に入ったものが納品出来る喜びには、やはり一入のものがあります。

七夕の平薬
七夕飾りの制作も7年ぶりになりましょうか、今回は絹サテンを何色かの緑に染め、笹に型抜きして使ってあります。何しろ短冊を下げなければなりませんから、若干の違いがあるだけで笹はこうした構成にしか出来ないように思います。困ったのは短冊として使う紙で、とにかく有職造花が笹のみですので、どんなに高価であろうと出来るだけ上等の料紙なりを使わないと安っぽくなってしまいます。短冊にはいつもながら大國主命の娘玉照姫の七夕の歌を仮名書きしました。
五節句の掛け物
四季風鈴掛けで作った房から、ふと思いついた飾り物です。直径七寸の桐の板を揚巻結びした絹紐に下げ、その下方に朱の房を付けた掛け物としてみましたが、板が5枚あったので五節句を作っただけの事、何せ小さな丸ですので載せる有職造花もあっさりとまとめる必要があります。上巳は、定番の桜橘。端午は、菖蒲と蓬。七夕は、笹に短冊、重陽は、紅白平菊に茱萸の一枝をあしらい金泥で遠山を描きました。

ミニ平薬
ミニ平薬
雛立像に持たす小道具として作った、直径僅かに5cmの平薬です。その後要望があって、小さな飾り物としていくつか作ってみたのです。輪のサイズからすると花が大き過ぎるのですが、花はあくまでも鏝を当てたものでなければ意味がありませんから、どうしてもある程度の大きさが必要なのです。しかしこうした小さな物だと、構成の難しさこそ特別ではあっても、所詮小さいということにしか価値が無い…というような気持ちになり、ストレスが溜まって来てしまうのです。
草の薬玉
草の薬玉は、一般的に薬玉と呼ばれる球形のもので、籐で作った球体に有職造花を配したものです。球体の中を覗き見ると、空洞の中に三つの薬玉が籠められています。
この薬玉は昭和初期の雲上流造花のもので、完璧な技術とセンスの高さが見られます。
節句用に桜の薬玉・橘の薬玉を雛の左右に下げ飾ったりもしました。

『草の薬玉図』(玉体部21cm)

『草の薬玉図』(玉体部42cm)
雲上流草の薬玉

昭和初期、雲上流の制作によるものですが、形体・色彩・技法など雲上流本来の様式が完璧に示された逸品で、珍しく桜や梅の蕊まで残っています。籐で作られた球体に装飾的な有職造花を植え付けてありますが、空洞の中心近くには金糸で編んだ網を被せた薬玉三個が据えられています。

素十作草の薬玉

京呉服の老舗ゑり善様の逸品会用に制作したものですが、私にとっては初めての挑戦でした。展示会場メインの飾り物にするべく、籐で組んだ土台の直径を尺一寸(33cm)と大きな物にしたのですが、出来上がってみれば尺四寸(42cm)にもなりました。球の表面積はこれほど大きかったかと多少後悔もしましたが、出来てみればその華やかさに驚きながら、下品にならなかったことに胸を撫で下ろしたのです。メインの花は、牡丹、菊、椿の三種。それを配置した空間をツツジ、桔梗、小菊、桜、橘、撫子で埋めたのです。花数は1450近くにもなり、制作には一ヶ月を費やしました。
  

春夏・秋冬一対の薬玉(草)

出来上がりの直径が七寸という小ぶりの薬玉ですが、春夏の花、秋冬の花の構成で一対にして欲しいという要望で制作したものです。とても面白いプランでしたので楽しんで作りました。
春夏の薬玉は、メインに牡丹、菖蒲、百合を置き、桜・山吹・皐月・橘・常夏(撫子)で埋めましたが、百合の制作は初挑戦でした。有職造花の範疇に百合が含まれる事は、昭和初期京都雲上流による花車に小さな百合が見えた事で知ったのです。下に垂らす花を藤にしたのは、是非にとの依頼者様の要望でした。

秋冬の薬玉は、メインに玉菊と八重椿を四方に据え、松に紅梅・小菊・紅葉・水仙・桔梗を散らしました。
下花の萩も依頼者様の要望でしたが、秋らしさの強調でススキも添えてみたのです。共に陰陽道の五色を基本にしてありますので、季節は違っても全体の色彩はさほど変わらないかと思います。
『雛と桜橘の薬玉図(丸平五世大木平蔵作)』
二番親王尺十人揃
昭和初期丸平大木人形店で誂えられた贅沢な雛人形ですが、ここでの桜橘は草の薬玉様式にしてあります。桜の薬玉と橘の薬玉をとりわけ豪華な紐を流して上部の空間を彩るものです。紐は畑甚(ハタジン)という名人職人によるもので、流れる曲線に例えようもない美しさと完璧な技術が見て取れます。
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